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短編小説のような物語性と音に惹き込まれる!有機酸・神山羊のおすすめ曲
有機酸として、また神山羊としてこれまでに発表されてきた楽曲は、どれも短い物語を読んでいるかのようなストーリー性を感じさせてくれます。生活音やノイズを取り入れるなど音へのこだわりも強く、一度ハマったら抜け出せない独特の世界観が魅力です。
続いては、そんな彼の楽曲から厳選した4曲を紹介します。
有機酸/ewe – quiet room feat.初音ミク
2017年8月にYouTubeへ投稿された、ボーカロイド・初音ミクのための楽曲。有機酸として初めてセルフカバーを行った曲でもあり、原曲と共に今なお多くのファンに愛されています。
世界から取り残されてしまったような孤独感と、その孤独へ寄り添うような温かさが共存した曲調が特徴です。有機酸が生み出す物語に対して挿し絵のような役割を果たし、楽曲の世界をより広げてくれる東洋医学のMVにも注目してみてください。
歌詞に注目してみると「何を口にしても味がしないな まるで粘土細工のようだった」「賑やかが寂しい桑園」「淡い淡い闇の中」など、人間の味覚や聴覚、視覚で味わえるものが綴られているのが分かります。感覚に直接訴えかけてくる要素を取り入れた表現は、よりリアリティをもって聴き手の心に迫りますよね。
「陽だまり」と「蟠り(わだかまり)」、「靴は要らない」と「まだいるかい」などあらゆるフレーズで韻が踏まれており、さりげなく意識に残りやすい工夫がされている点も秀逸です。
「quiet room」は原曲を何度も聴いて楽しむのはもちろん、有機酸によるセルフカバーverと聴き比べて違いを味わうのもおすすめ。
原曲では、初音ミクのボーカロイドらしい機械的な声と、聴き手の心へ直接語りかけてくるような生々しさの共存に鳥肌が立ってしまうこと間違いなしです。有機酸が調声する初音ミクはどこか切ない声色と独特の癖が特徴で、ファンの間では「有機酸(が作る曲)の初音ミクは聴いてすぐに分かる」と言われています。
それに対しセルフカバーverでは、一見すると大人しそうな子が内側に激しい感情を秘めているような、心にじわじわと迫ってくるボーカルが見事です。
有機酸/ewe – カトラリー feat.初音ミク
「quiet room」と同様、ボカロP・有機酸が初音ミクのために制作した楽曲。2017年のクリスマスに原曲がYouTubeへ投稿され、約1週間後に続けて投稿されたセルフカバーverとあわせて大きな反響を呼びました。セルフカバーverの再生回数は、2022年6月時点で2000万回を突破しています。
「カトラリー」は、恋人同士の仲が少しずつ冷めていってしまう様子と、使い込まれたカトラリーが錆びていく様子を重ねあわせて表現した楽曲です。東洋医学が手がけたMVに注目してみると、登場人物の物憂げな表情が絶妙に描かれていたり、画面を2つに割って「同じ部屋にいるはずなのに心がバラバラの恋人同士」を表現したりと、歌詞やサウンドの一つひとつが丁寧に拾われていることが分かります。
サウンド面では、一瞬「音楽の再生が止まってしまったのか?」と錯覚してしまうほどブツブツと切れるピアノや、Bメロに入った途端急激に変化するビートなど、すんなりとは流れていかない音楽が聴き手の心に「ん?」と引っかかりを与えます。エアコンの電源を付けた(あるいは消した)時のような「ピッ」という音、台所で食器を洗う音など、曲のあちこちに生活音が取り入れられているのも注目ポイント。
初音ミクが歌うオリジナルverは、ボーカロイドだからこそ出すことのできる機械的な声色が、少しずつ離れていく恋人同士の心をより寂しげに描き出しています。人間らしい気怠さや感情の起伏が存分に表れたセルフカバーverも耳に心地よく、どちらもまた違った魅力を味わえる仕上がりです。
神山羊 – 色香水
TVアニメ「ホリミヤ」のオープニングテーマとして書き下ろされた楽曲。2021年2月にデジタルリリース、2021年3月にCDリリースが行なわれました。
神山が「80’sと今のポップミュージックを融合させるというアプローチをやりたいと思っていた」と語るこの楽曲は、YMOを連想させるようなどこか懐かしいテクノサウンドと、洗練されたビートを同時に楽しめるのが魅力。シンセサイザーやリンドラム(YMOなどの楽曲によく使用されているリズムマシーン)がほんのりバブル時代の匂いを漂わせる一方で、サビに入った途端にビートをいきなり重くさせるなど、複数の音楽ジャンルや時代の空気感を楽曲へ取り入れるテクニックに圧倒されます。
TVアニメ「ホリミヤ」は、クラスの中心的存在で明るいギャル・堀京子と、地味で目立たないオタク・宮村伊澄(いすみ)が主人公。2人が互いの秘密を知ったことで仲を深めていく物語の世界観は、実写を用いたMVでも描かれています。物語の設定が2010年ごろということもあり、アニメと一緒に音楽を味わうことで懐かしさを感じる人もいるのではないでしょうか。
また、タイトルの「色香水」について神山は、人間の記憶に一番残りやすいものは匂いであるという考えから浮かんだと語っています。場所や人、動物など記憶にはそれぞれ匂いがあり、しかもそれに色が付いている。実際は別のところで認識する「色」と「匂い」を結びつけ、ストーリー性溢れる楽曲を作り上げてしまうセンスに脱帽です。
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神山羊 – 仮面
TELASAオリジナルドラマ「僕らが殺した、最愛のキミ」の主題歌。神山が初めて手がけたドラマ主題歌であり、作詞・作曲は神山が、アレンジは女王蜂などのサポート・楽曲アレンジで知られるながしまみのりが担当しています。
ドラマのおおまかなストーリーは、それぞれ秘密を抱えた小学校時代の同級生7人が同窓会で再会し、激しい愛情と殺意を向け合うというもの。第1話から衝撃の連続で視聴者を虜にし、通称「密室グロきゅんラブストーリー」として話題を集めました。
主題歌「仮面」は、神山の楽曲としては珍しく生音が前面に押し出されており、ジャジーなアレンジとホーンサウンドがミステリアス。また、Aメロやサビではボーカルのオクターブ下で潜むようなハモりがあり、仮面をつけて取り繕った偽物の顔と、誰にも見せない本当の顔を連想させます。
MVは新鋭の映像クリエイター・Spikey Johnが担当。仮面を付けた主人公が東京の街をさまよい歩く姿を、モノトーンの画面に映し出しています。自分なりにストーリーを想像しながら楽しんでみてはいかがでしょうか。
最後に
常に音楽の新しい可能性を模索し、決まった枠組みにとらわれない楽曲を生み出し続けている神山羊。ボカロP・有機酸としても活動を続けていきたいと語る彼が、今後どのような世界を見せてくれるのか期待が高まります。
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